イタリア南部の開発および雇用促進を図るため、政府の要請に
応じてアルファロメオが建設したナポリ近郊のポミリアーノ工場で
生まれたアルファ初のＦＦ量産車がアルファスッドです。生産地に
ちなんで’スッド’と名付けられ１９７１年１０月に発表されたこの車
は、それまでのアルファロメオとはまったく異なるモデルでした。　
　新たに開発された水平対向４気筒ＳＯＨＣエンジンをフロント・ア
クスル前に配し、前輪を駆動するＦＦ方式としてコンパクトながら広
い室内空間を確保し、さらにフロントにはインボード・ディスクを採
用するなど、非常に革新的なモデルでした。ジウジアーロ・デザイ
ンによるボディは空力的にも優れており、車重が軽いこともあって
卓越した動力性能を発揮しました。その後、２ドアモデルにスポー
ティー・バージョンとして、キャブレターをウェーバー製に換装した
アルファスッドtiが１９７３年末に追加されました。アルファロメオは
スッドのイメージアップを図るべく、このtiをアウトデルタの手により
チューニングし、サーキットやラリーフィールドに積極的に参戦させ
ました。　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　
好調な販売が続いたアルファスッドにはその後、幾つかのボディ
バリエーションが追加され、１９７４年にはハッチゲート付きクーペ
であるスッド・スプリントが登場しました。このスッド・スプリントにも
スッドtiと同様、アウトデルタ製のさまざまなチューニング・パーツ
が用意され、イタリア国内の各種イベントで活躍しました。ただ
し、ラリーについてはアウトデルタ自ら参戦することはなく、プライ
ベート・チームによる参戦が主となりました。　　　　　　　　　　　　
アルファスッドは、ＦＦ後継車であるアルファロメオ３３のデビュー
後、１９８４年まで生産が続けられました。地域産業振興のため
生まれたこのアルファスッドに、あえて新機構を盛り込むあたり　
　’イタリアン・ロマン’を感じ、非常に魅力的な車でありますが、
品質に関しても’イタリアン基準’で、初期のモデルはかなり問題
が多かったそうです。