ＤＡＴＳＵＮ ＶＩＯＬＥＴ ７１０
日産の乗用車ラインナップにおいて、サニーとブルーバード
の中間クラスとして１９７３年１月、初代バイオレット（７１０型）
がデビューしました。
大ヒット作であった５１０型ブルーバードの後継車であるブル
ーバードＵ（６１０型）は、販売戦略の見直しにより大型化され
たため、小排気量の５１０型（１４００・１６００）も併売されてい
ました。この実質的な後継車としてバイオレットは企画された
ことから、型式は連番の７１０型となりました。
バイオレットのスタイリングは、直線的な５１０型に対し曲面を
多用したファストバック・スタイルの意欲的なもので、機能面で
はＬ型エンジン（Ｌ１４・Ｌ１６）を引き継ぎました。足回りについ
ては、前輪がマクファーソンストラット、後輪がリーフリジットと
なり、４輪独立懸架であった５１０型よりも簡素化されました。
また、５１０型と同様にスポーツ・グレードとして１６００ＳＳＳ
が設定され、このモデルのみ足回りに５１０型譲りの４輪独立
懸架が採用されました。
１９７０年代初頭、日産はサファリ・ラリーを中心とした国際ラ
リー参戦に積極的で、５１０型や２４０Ｚで数々の好成績を挙げ
ていました。ところが、オイルショックの勃発によりワークス活
動は休止を余儀なくされ、ベース車である２４０Ｚや６１０型に
ついても、スプリント化が進むラリーでは苦戦を強いられていた
ことから、７１０型をベースに新しいラリーカーの開発が行われ
ました。
ベースとなったのは、スポーツ・グレードの１６００ＳＳＳで、エ
ンジンは市販車よりも１サイズ大きなＬ１８（１７７０ｃｃ）をツイン
キャブ装着等により１６０ｈｐにチューンして搭載し、グループ２
のホモロゲーションを取得後、ハリー・カルストロームのドライブ
により１９７４年の１０００湖ラリーでＷＲＣデビューを果たしまし
た。この年はＲＡＣラリーにもディーラー・チームから３台が参戦
し、全車完走を果たしています。
翌１９７５年のＷＲＣは、サファリ、モロッコ、ポルトガルそして
１０００湖ラリーに参戦しました。しかしながら、日産得意のサ
ファリでは、次元の違う速さをみせたランチア・ストラトスや非力
ながら耐久性の高いプジョー５０４などの後塵を浴び、６位が
最高位という結果に終わりました。なお、この年からドライバー
に１９７３年サファリ覇者のシェカ・メッタが加入し、Ｈ・カルスト
ロームと共にマシーンの開発を進めました。また、驚くべきこと
に１０００湖ラリーでは、マルク・アレンがスポット参戦していま
す。結局このシーズンは優勝はおろか、表彰台に上がることも
なく終わり、スプリント化が進むＷＲＣにおいて、エンジンパワ
ーの不足が顕在化しました。
これを受け、日産ワークスはＬ１８エンジンの排気量を１９４１
ｃｃに拡大のうえヘッドをＤＯＨＣ化し、２６０ｈｐまでパワーアッ
プを図り、グループ４の公認を得て翌１９７６年のサファリ・ラリ
ーに臨みました。しかしながら、この年も熟成の進んだコルト・
ランサーやプジョー５０４に歯が立たず、カルストロームの７位
が最高位という結果でした。ただし、その後に参戦したアクロ
ポリス・ラリーにおいて、カルストロームが優勝、メッタが３位に
入賞し、ラフ・ロードにおける耐久性を証明することとなりまし
た。当時の日産は、国際ラリーにおける活躍を海外市場の販
促に生かすことを目論んでいましたが、充分なエンジンパワー
を得たものの７１０型の戦闘力は依然として低く、ＷＲＣチャン
ピオンを狙えるマシーンではないことから、翌１９７７年もサファ
リとアクロポリスのみの参戦となりました。
この年のサファリは、記録的な豪雨の中で行われ、優勝は
強力なチーム体制で参戦したワルデガルドのフォード・エスコ
ートでしたが、日産勢ではラウノ・アルトーネンが久々に２位を
獲得しました。その後、前年と同様にアクロポリスでも好成績
をあげ、７１０型はようやく結果を出せるマシーンに仕上がりま
したが、市販車バイオレットの売行きが低迷していたことから、
この年の５月にベース・モデルがフル・モデルチェンジ（ＰＡ１０
型）されました。
さらに日産は、欧州におけるラリー活動を強化するため、イギ
リスに拠点を置く”チーム・ダットサン・ヨーロッパ”（ＴＤＥ）を設
立し、ＷＲＣ制覇を目指すこととなりました。これを受け、日産
ワークスでは７１０型の後継車としてＰＡ１０型バイオレットの
ラリー・マシーン開発が開始され、１９７８年のサファリ・ラリー
でＷＲＣデビューを果たしました。この年のサファリには、７１０
型もサポートとして出場しましたが、レギュレーションの変更に
よりＤＯＨＣヘッドの装着が不可とったため、非力なＳＯＨＣエ
ンジンによる参戦となり、結果は奮いませんでした。
一方、ＰＡ１０型の開発・熟成は順調に進み、７１０型バイオ
レットのワークス活動は、１９７８年のサファリ・ラリーを最後に
終焉を迎えました。
ラリー史にその名を残す’ＤＡＴＳＵＮ’ラリーの名車、２４０Ｚと
ＰＡ１０バイオレットの間に挟まれ、オイル・ショックや排気ガス
規制の嵐に翻弄された不運な時期に生まれた７１０型バイオ
レットは、５年間のＷＲＣワークス活動で、わずか１勝しか挙げ
られませんでしたが、一方で日産の苦しい時期にラリー活動
の魂を何とか繋いだ、価値のあるマシーンと言えるでしょう。
また、この辛抱がＰＡ１０型の成功の元となったと言っても過
言ではありません。
市販車は、独特のボディ・スタイルが災いして不人気車とな
ってしまった初代バイオレットですが、２ドア・クーペのスタイル
は今見ても斬新で、発売当時、子供心にもカッコ良く感じたこ
とを覚えています。こういった不遇のマシーンのキットが手に入
るのも１／４３の醍醐味ですね。 |
ＧＡＬＬＥＲＹ
|
|
1974
|
VIOLET 710 Gr.2
RAC RALLY No.20 |
|
1976
|
VIOLET 710 Gr.4
ACROPOLIS RALLY No.14 |
|
1977
|
VIOLET 710 Gr.4
ACROPOLIS RALLY No.10 |
|
|
|
ＤＡＴＳＵＮ ＶＩＯＬＥＴ ７１０ ＷＲＣ ＲＥＳＵＬＴ
|
YEAR
|
EVENT
|
CAR
|
Gr.
|
REGURATION No. |
DRIVER/
CO-DRIVER
|
CAR
№
|
RESULT
|
KIT LIST
|
|
1974
|
1000 LAKES |
VIOLET 710 |
2
|
TKS56TO3192 |
H.Kallstrom/
C.Billstam |
10
|
21
|
|
|
RAC |
VIOLET 710 |
2
|
TKS56NI8636 |
C.Sclater/
M.Holmes |
20
|
9
|
MINI RACING
331 |
|
VIOLET 710 |
2
|
TKS56NI8634 |
H.Kallstrom/
C.Billstam |
13
|
15
|
|
|
VIOLET 710 |
2
|
TKS56NI8639 |
P.Faulkner/
M.Peters |
34
|
20
|
|
|
1975
|
SAFARI |
VIOLET 710 |
2
|
TKS56NO9123 |
Z.Remtulla/
N.Jivani |
14
|
6
|
|
|
VIOLET 710 |
2
|
TKS56NO9122 |
H.Kallstrom/
S.Bostrorm |
11
|
RETIRED/
engine
|
|
|
VIOLET 710 |
2
|
KLS347 |
F.Tundo/
A.Levitan |
27
|
9
|
|
|
MOROCCAN |
VIOLET 710 |
2
|
TKS565NI8634 |
S.Mehta/
B.Bean |
5
|
6
|
|
|
PORTUGAL |
VIOLET 710 |
2
|
TKS56HA7717 |
S.Mehta/
Y.Pratt |
7
|
7
|
|
|
1000 LAKES |
VIOLET 710 |
2
|
TKS56HA7717 |
T.Salonen/
J.Markkula |
15
|
6
|
|
|
VIOLET 710 |
2
|
TKS56HO6793 |
M.Alen/
I.Kivimaki |
3
|
RETIRED/
accident
|
|
|
VIOLET 710 |
2
|
TKS56HO6792 |
H.Valtaharju/
R.Antilla |
10
|
RETIRED/
accident
|
|
|
1976
|
SAFARI |
VIOLET 710 |
4
|
TKS56NE6431 |
H.Kallstrom/
L.Lindqvist |
10
|
7
|
|
|
VIOLET 710 |
4
|
TKS56NI8634 |
Z.Remtulla/
N.Jivani |
12
|
8
|
|
|
VIOLET 710 |
4
|
TKS56HA7717 |
S.Mehta/
M.Doughty |
5
|
RETIRED/
accident
|
|
|
VIOLET 710 |
4
|
TKS56NE6432 |
H.L-Brown/
D.Pavely |
25
|
RETIRED/
engine
|
|
|
VIOLET 710 |
4
|
TKS56NO9122 |
H.Schuller/
E.Kleint |
32
|
RETIRED/
lost wheel
|
|
|
ACROPOLIS |
VIOLET 710 |
4
|
TKS56YA6960 |
H.Kallstrom/
CG.Anderson |
14
|
WINNER
|
MINI RACING
321 |
|
VIOLET 710 |
4
|
TKS56YA6932 |
S.Mehta/
H.Liddon |
5
|
3
|
|
|
1000 LAKES |
VIOLET 710 |
4
|
TKS56HO6792 |
T.Salonen/
J.Markkula |
13
|
6
|
|
|
1977
|
SAFARI |
VIOLET 710 |
4
|
TKS56TO3192 |
R.Aaltonen/
L.Drews |
17
|
2
|
|
|
VIOLET 710 |
4
|
TKS56TO3192 |
Z.Remtulla/
N.Jivani |
15
|
8
|
|
|
VIOLET 710 |
4
|
TKS56NO9123 |
S.Mehta/
M.Doughty |
5
|
RETIRED/
engine
|
|
|
VIOLET 710 |
4
|
TKS56NI8639 |
H.Kallstrom/
C.Billstam |
8
|
RETIRED/
accident
|
|
|
VIOLET 710 |
4
|
KNY57NA5329 |
H.L-Brown/
D.Pavely |
19
|
RETIRED/
piston
|
|
|
ACROPOLIS |
VIOLET 710 |
4
|
TKS56NI8638 |
H.Kallstrom/
C.Billstam |
1
|
3
|
|
|
VIOLET 710 |
4
|
TKS56NI8634 |
'Siroco'/
M.Makrinos |
10
|
5
|
MINI RACING
421 |
|
1978
|
SAFARI |
160J(710) |
2
|
|
J.Hellier/
K.Shah |
17
|
7
|
|
|
160J(710) |
2
|
|
J.Shah/
N.Eisa |
26
|
9
|
|
|
160J(710) |
2
|
|
Z.Remtulla/
N.Jivani |
15
|
RETIRED/
transmission
|
|
|
160J(710) |
2
|
TKS57NI8740 |
H.Kallstrom/
C.Billstam |
7
|
RETIRED
suspension
|
|
|
ACROPOLIS |
160J(710) |
2
|
|
G.Maschous/
'Constantinos' |
17
|
RETIRED/
accident
|
|
ＧＡＬＬＥＲＹ ＴＯＰ ／ ＭＥＮＵ
|